2001.9.22
FINAL FANTASY
ちうことで見てきました。いや原作・制作・監督が例のあの方とくれば過剰な期待は厳禁。ゲーム感覚をそのまま映画を作ってたらどーしようってことですごく楽しみ(楽しみかい)でした。
で、この映画。ひとことで言えば前評判通り…というか、予想通りの出来でした。CG一流、シナリオ二流、演出三流と言ったところでしょうか。どこのレビューを見てもCG(映像にあらず。この違いは後述)しか誉めてないしね。
今回はかなり長いです。それから、えらそーな事を知った風に書いてますが、専門に勉強したワケでも、何か実績があるわけでもありません。そのあたりを承知のうえで世露死苦ね!
現代最高水準のCG!(つまりこれが限界)
例のプロデューサーがこだわった、世界初の全篇フルリアルCGということだけが話題の本作。
キャラの髪の毛、髭、肌の毛穴、染み、質感…どれをとっても恐ろしくリアルで、果たしてここまでやる必要があるのか!?というクオリティです。そう、ここまでやる必要があるかどうかというのがいちばんの疑問。正直なところあまり必然性を感じないので「汚い」「醜い」と叩かれてるようですが、これはこれで表現のひとつだろうと思うので良しとします。良しとしないのは、結局人物でまでCGでやる必然性がまったくなかったということ。人物に対してはこれといったSFX効果もないし(怪物に変身するとか、溶けるとか)、役者の演技をモーションキャプチャしてるらしいですが、システム上の制約か派手なアクションが少なく、またところどころでどーしてもマネキンやマリオネットっぽい動きが見え隠れするのでいまいちのめり込めません。このあたりに「人物までCG」でやることの限界を感じます。
これは演出面の問題でもあるんですが、表情の変化に乏しいためメリハリにかけますし(主人公なんかまるで能面。ほとんど変化なし)、カラダの筋肉の動きまではシミュレートしてないので、動物の持つ脈動感というますか、命の息吹も感じられません。主人公が医療用のベッドに横たわるシーンがありますが、生きてるのはわかっていても、私には死んでるよーにしか見えませんでした。鳥もCGですが、飛んでるシーンは紙切れかボロ布がのたくってるよーに見えてしまうのは私だけでしょーか。
SFXはたしかにすごいですが、CGならまあ可能でしょうというものです。結局、すべてをCGで表現することはむしろデメリットのほうが大きく、技術面でまだ早かったということでしょうか。CGだからすごい!ていうのはトイストーリーあたりで終ってると思います。まあでも、少なくとも世界最先端であることは間違いないですし、それがまだまだ完全ではないものであることもわかったので意義はあったと思います。100mのレコードホルダーを「8秒台じゃないからダメ」と非難するのは間違ってますからね。
と、これで200円分くらい誉めたかな?(ほめてないやん)
ファイナルなんとか
西暦2065年。30年前、地表に落下した謎の隕石とともに出現した謎の精神体「ファントム」により、人類は絶滅の危機に瀕していた。軍は衛星軌道の巨大レーザー「ゼウス」でファントム発生源と思われる隕石の破壊を主張するが、あまりに強力ゆえ地球そのものを傷つけてしまう。女性科学者アキは、シド博士の提唱する生命反応エネルギー理論に基づいた融和波動によってファントムを無力化するため、8つの精神体を探す…
愛と、精神・生命の根源と神秘を描いた壮大なスケールでお贈りします。
あーこのコンテンツを書くためにパンフレットを読んでるんですが、だんだん腹が立ってきた。
プロデューサーのごたくなんざ聞きたかねえや…と、閑話休題。
さて、本作はゲームとは全くかけ離れた世界観と設定です。ゲームと関連があるといえばシドという人名くらい。飛空挺も召喚魔法もありません。プロデューサーは「FFシリーズは根底に流れているテーマは同じ」とのたまっておりますが、それって「ミミズだってオケラだってアメンボだって生きてるんだ友達なんだ」っと同レベルでしょうか。私はゲームはスーパーファミコン一作目クリアで飽きて、FF7は途中で放棄、FF10も途中で飽きてPS2本体ごと里子に出てます(ま、これはシナリオじゃなくてゲームに飽きたからですが)。そんな私が言えるクチじゃないんですが、シリーズの根底に共通のテーマなんてあったかね?言いがかりになりますが、生命だの何だのをテーマに持ってくること自体陳腐とも言えなくはないです。私としては、フィクション、ノンフィクションともにテーマを持つのはいいと思います。が、それが見る側にとって面白いかどうかは別の問題です。そこに気がついているかどうかは、パンフレットなどで別に説明しないと伝わってこない、説明されてももうひとつピンとこない本作を見ればおのずとわかります。
うーむ、この映画がFINAL FANTASYのタイトルを冠するにふさわしいかどうかを通り越して、ゲームをシリーズとしてひとくくりにしてもいいかどうかに踏み込んでしまいそうなのでやめときます。
説明不足
本作では、生命や精神を独自の理論で解釈してます。これは面白いし、実際にビジュアル化された映像はすごくいい。が、問題はここから。
こういった独自の理論をきちんと説明するのはなかなか難しいのはわかります。が、劇中では「○○は▲▲なので××です」とセリフで有無を言わさずたたき込まれ、それ以上の事になると劇中で一切説明されません。それを匂わせるようなシチュエーションがとても少ないので、パンフレットを読まないと全く矛盾したままで進んでしまう設定も多く、このへんで脱落した人も多いようです。
ファントムは精神体>肉眼では見えない>特殊なスコープや道具(冒頭に使われる照明弾のようなもの)を使わないと所在がわからない…このあたりは劇中でも何とかわかります。肉眼では見えない設定も途中で無理矢理キャンセルされますが(笑)
で、目にみえない敵ですから物理攻撃は通用しません。しかし、特殊部隊ディープアイズは銃でファントムをガンガン倒してます。どーゆーこっちゃい!と思ったら、実はオボパックという人口的に造られたセル細胞が詰められたカプセルから取り出せる放射精神エネルギーを使った、唯一ファントムを倒せる武器なんだそーです。って劇中でそんな説明一切ナシ!オボパックそのものの説明もナシ! オボパックはオボパックだ、文句あるか!パンフ見ないとなんなのか想像も出来ません。
ファントムを融和するのに必要な8つの精神体も、それがなんなのか、なぜ8つなのか、なぜ植物、少女、オボパックなどが精神体になったりするのかに至ってはどこにも説明がありません。
こういうものはある意味方程式のようなもので、xやyがいくつかあっても答えは導き出せます。もちろん誰にわかるものはありませんが、だからと言って何もかも説明する必要はありません。しかし、本作ではxやyがあまりに多すぎるのか、わかっている情報が少なすぎるのか、とにかく解答不能な式が多く、すべてを追いかけるのはとても無理です。ま、わかんなくても話は進みますし、ついては行けるんですけどね。スクリーンの向こう側で勝手に話が進むので、物語への没入度は無いに等しいですが。
あれだけ使うとヤバいといわれてたゼウス砲、波動砲かブラックホール爆弾みたいな強烈すぎる兵器かと思ったら、せいぜい艦砲射撃か巡行ミサイル(通常弾頭)で、ほぼ爆心にいた主人公たち無傷だし。
世界はわたしを中心に
主人公アキ。ニューヨークの廃墟で精神体探索中にファントムに襲われたところをディープアイズに助けられ、そのあとの精神体探しでも助けられ、ファントムに襲撃され壊滅状態のバリアシティーからの脱出でも助けられ(ディープアイズ3人死亡)、ファントム本体融和で助けられ(元カレ死亡)…この女、いつもわりと安全なところにいたりして、自分はなーんにもやっちゃいません。ちうかこいつの通る道は死屍累々。冒頭、グレイがファントムに取り憑かれて危機一髪!しかしアキの迅速な治療で一命を取りとめてかっちょえー!…ってこの女がニューヨークの廃墟で無茶しなければこんなことにならなかったのでは?
次々と襲いかかる危機!それを紙一重でかわす主人公!うーん、ちょっと違うなあ。
シナリオにそって前に進むというよりは、主人公は止まったままで世界のほうが動いている様な感じ。テーブルに座ってたら料理が次から次ぎへとやってくるような、フォークを落してもウェイターが新しいのをくれるような。おいしいところはしっかり持って行くくせに、それ以外は全く活躍しない主人公も珍しいというよりムカつきます。
カレー味キャラクター
本作は映画ですから、当然いろんなキャラクターが登場します。しかし、アクの強いキャラが全くおらず、主人公を含めてすべてのキャラの印象が実に薄い。劇中だけで性格設定を見て取れることは困難です。一番わかりやすいのはニールというディープアイズのお調子者。軽妙な台詞回しが本作の中ではもっとも個性的…ですが、他の映画と比べるとわりとどこにでもいるタイプですし、強烈な個性というものではありません。
また、本作では悪役という位置づけのハイン将軍ですが、こいつも悪役としては没個性的で魅力に欠けるのが泣き所。光が強けりゃ影が立ち、影が濃いと光も目立ちますが、この作品はどっちもボンヤリと薄暗いので全く引き立ちません。一応アキとは対立関係にあるにはあるのですが、お互いがあまり干渉しあわずにそれぞれ自分のシナリオをたどるので手に汗握る駆け引きは皆無、ということでどうにも緊迫感に欠けます。ハイン将軍、ラストは勝手に死ぬし。
近ごろ「ありがち」なもののことをカレー味と呼んでいます。これは、特別うまいわけではないが、無茶さえしなければ(ちうかする気がない)そうそう失敗もしないものを狙ってつくられた悪くはないものを指しますが、そういう意味では本作のキャラクターたちはもろにカレー味です。それもあまり美味しくないほうの。
ゲーム感覚
さて、二流シナリオをこき下ろしたので、次は三流演出です。
FFXをプレイして、この演出を映画に持ち込まれたらマズいよなあ〜と思ってたんですが、ほんとにこのまんま映画にされてしまいました。うーむ。
さて、一番まずかったのは、キャラクターやギミックのアップがあまりに多すぎること。いやたしかにCGはすごいんですが、ディティールを無理に見せようとした結果全体像が掴みにくくなってます。ことあるごとにキャラのアップになるので、まるでグラビアアイドルのビデオのようです。
ゲームではカメラをグリグリ動かしてハードの性能やプログラムの優秀性をアピールする手法がよく見られますが、スクリーンでは視点がムダに動いてるように見え落ちつかず、静と動の使い分けが全く出来ていないので大味の安っぽいビジュアルになります。これはなかば言いがかりですが、ズームやパンをやたらめったら多用するのは、一発で構図を決められない、フレームに収められない、技術不足以外のなにものでもありません。フレームに収められないものをカメラを動かして追うものですから奥行き感がなく、どうにも平べったい絵になっているように感じます。手前からむこう(あるいは逆)にモノが動いたら迫力はありますが、そんなのばっかりだと飽きるんだってば。
まあ、映像を止め絵にしてみるなら、世界最高水準のCGなのでクオリティはすごいのですが、映画として動かした
場合の映像としてはもうひとつと言ったとこでしょうか。
ゲームでは評価が高いのは、単にハードウェアや制作費の制約があって、100点満点の絶対的な高さが低いからです。コンシュマーでここまでできれば上出来っていうことですが、劇場映画となると次元がかわります。ゲームなら90点も取れば文句なしの合格点ですが、それが200点満点中となると同じ点数では落第ギリギリですしね。
楽しんでほしかった?
さて、そろそろ総括(とどめともいう)に入りましょう。
まあいままであらん限りぼろくそに書いてきましたが、これらをまとめて見ると、ボンヤリとではありますがいくつかの諸悪の根源が見出せます。
それは、観客にこの映画をみて楽しんでほしいという姿勢が全く無いこと。何もかもが向こう側からの押し付けで、いっしょに楽しんで行きましょうというメッセージが皆無です。コマーシャルフィルムならそういうのはアリですが、劇場にまで足を運んでもらって、鑑賞料をもらって見てもらう映画としては失格。まあ、パンフレットも安いほうで900円(シネマコンプレックスで見たのですが、10作品ほど上映しててお値段トップ)、B4サイズで大きくて邪魔だし、豪華版に至ってはショップのおねえさんも思わず苦笑い2,500円(こちらはさすがに買わなかったが)。プロデューサー兼原作兼監督のごたくで見開き4つ(ま、都合4ページほどですが)を使うんだから、すでに終ってます。ラルクの主題歌もスタッフロールの後半で普通に流れるだけ。ワーナー系の劇場で見たのであとからディープアイズバンドのプロモーションがあるのですが(だからスタッフロールが始まっても席を立つ人が少なかった)、9割は本編カットのまんま流用なのでつまらないことこの上ない。CGなんだからデータ流用や少々の加工でバリエーションは増やせるので、例えば顔だけラルクに入れかえるだとか、「俺の歌を聞けー!」と言わんばかりにギターのサウンドでファントムを攻撃するだとか、攻撃を受けたファントムが改心してして曲に合わせて踊り狂い、ラストで昇華!だとか、そういう楽しさもあってもよかったのでは?(それじゃ映画の雰囲気を壊すだろ!という意見もありそうですが、ディープアイズをそのまんまバンドに流用している事実で反論できます)と考えたところ、そんなサービスをする気がない→楽しんでもらおうという意識がないという結論に達したワケです。ちうか、単に思いつかなかっただけかもしれませんが、それはそれでもっと問題ですな。
で、結論。
「ストーリーがわからない」「設定が掴めない」「CGの動きがイマイチ不自然」などなど、つまらない理由はいろいろ上げられています。でも、結局はこういった理由は減点対象のひとつでしかなく、それだけで面白くないといわれてしまうのは、結局観客に「面白い!」と言わせるだけのエネルギーが無いということではないでしょうか。説明なんぞほったらかし(エヴァンゲリオン)、絵はマズい(邦画に多いかな)、ストーリーイマイチ(TAXiとか。ゲームならスペースチャンネル5とか)でも「面白い」と言われるものはあるしね。まあ、エネルギーを!ったってどーやったらエネルギーが出るのかわからんけど。記号を組み合わせたらできるもんじゃないし(そうなるとスクウェアではますます無理か)。
次回作に期待…といいたいところだけど、ゲームで同じようなことをずっと続けてる前科があるし、いまのままではこれ以上のものは期待できません。やるなら少なくとも頭はとっかえないとマトモなモノはできないでしょう。

コピーも腐ってたしねー。戦うのか、愛するのか…って野球と寿司どっちが好き?って聞かれても答えられないって。戦うったってアキはあんまり戦ってないし、愛するったってきっかけナシで(ちうかちゃんとした描写がない)いつの間にかよりが戻ってるだけだし。
あ、あと主導は日本なのに日本語吹き替えが無いことはおおいに不満。プロデューサーのハリウッドコンプレックスのせいだと思うのですが、字幕見ながらCG鑑賞はつらいです。この辺も観客不在ですかね。

そういや最近読んでるクソゲー、バカゲー本に、スクウェアの含有率が妙に高いのを思い出した。


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